肩こりで病院に行くなんて、お医者さんに迷惑? と思っている人も多いようですが、それは間違いです。
肩こりは主に筋肉疲労が原因となるものの、その他に体の異常が理由になっている場合もあり、検査することで大きな病気が発見されることもあります。
とはいえ、何科にいけば良いのかという疑問もあるでしょうから、ここでは肩こりの診察をする科の特徴と、療法の種類を解説します。ご自身の症状に合ったところを選んでください。
また、病院にいくまでの間に、少しでも症状をおさえられるよう、市販薬や気楽に行える解消法についても解説します。
1.何科に行けば良い?それぞれの特徴を紹介
多くの肩こりは筋肉の緊張が原因ですが、ときに重大な病気が潜んでいる可能性もあります。症状が長引いたり、耐えきれないようなら、積極的に病院で診察を受けてみてください。
どの病院に行けばいいかわからない場合は、まず肩こり外来か整形外科に行くとよいでしょう。
1-1.どの病院に行けばいいかわからない場合
1-1-1.肩こり外来
病院によっては、肩こり専門の外来というものがあります。文字通り、肩こりに特化した診察をしてくれるところで、血液検査やレントゲン検査などを行い、肩こりの原因をつき止めます。ここでの診察によっては、専門の科を紹介されることもあります。
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1-1-2.整形外科
肩こり外来を除けば、もっとも多くの人が利用する科です。筋肉や骨、関節や神経など、肩こりの主原因を診てもらえます。筋肉の疲労や寝違い、むち打ち、五十肩などの症状があるときはこちらを選びましょう。
1-2.必要に応じて専門的な診療を
1-2-1.神経内科
肩こりだけではなく、頭痛やめまい、手足のしびれ、力が入らないといった症状がある場合は、神経内科へ。筋肉以外にも、神経、脳、脊髄の検査をします。
1-2-2.脳神経外科
肩こりに、異様なほどの頭痛や嘔吐、手足のしびれ、脱力感があるようなら、脳神経外科へ。脳だけではなく、頸椎や脊髄の検査を受けることもできます。
1-2-3.眼科
目を酷使することにより、目の疲れや痛み、そして肩こりや頭痛が生まれます。視力矯正をしないで無理していたり、眼鏡やコンタクトレンズが合っていない場合には、目に負担がかかっています。視力に問題アリの人は眼科を選びましょう。ビタミン剤の点眼などにより、目の疲労回復をしてもらえます。
1-2-4.婦人科
更年期障害により、肩こりやめまい、動悸息切れ等、さまざまな症状が生まれます。更年期障害を総合的に診察するには、婦人科を選びましょう。
1-2-5.心療内科
肩こりは、心因性によるものもあります。肩こりの他に、体から疲れが抜けづらい、胃腸の調子が悪い、イライラしやすいといった症状があれば、こちらを選びましょう。抗ストレス作用のある薬が処方されるなど、精神的なストレスに対処します。
1-2-6.麻酔科
痛みの治療を専門に行うところで、即効性がある鎮痛治療に特化しています。神経ブロック注射をはじめとする薬物療法や鍼治療など、あらゆる手段を駆使します。
2.医師に症状を伝えるポイント
肩こりの診察を受ける際には、下記のポイントをおさえて説明すると、問診がスムーズに進みます。
≪どの部位に、どんな症状があるか?≫
- 「右肩のコリが酷くて、肩が上がらない」
- 「首筋がこっていて、頭痛と右手にしびれがある」
- 「横になっていても、右側頭部が痛い」
など、肩こり以外の症状も具体的に話します。また、以前にも経験があるか、症状は悪化しているか等も付け加えましょう。
≪症状が悪化するとき、調子の良いとき≫
- 「夕方になると、頭痛とともに肩がこる」
- 「朝飯の用意をしているときに、めまいとともに両肩の鈍痛がある」
など、どんな時につらい症状が生まれるか。
そして「温めると楽になる」「午前中は痛みを感じない」など、どんなときに緩和されるかを説明します。
≪原因の心当たりと、いつからか?≫
- 「先月に転職、職場環境が変わった」
- 「今月は残業続きで、パソコンに向かいっぱなしだった」
- 「先週、スポーツで転倒した」
など、心当たりを話します。また、手術経験や、現在治療中の病気があれば、そのことも伝えましょう。
3.肩こりの療法
肩こりは、病院でどのように治療してもらえるのか? 大きく分ければ、薬物療法、牽引療法、温熱療法、理学療法に大別できます。ここでは、それぞれの療法の種類や特徴を紹介します。
3-1.薬物療法
薬によりつらい症状を抑えるとともに、痛みの悪循環を取り除きます。
≪神経ブロック注射≫
肩こりの痛みを伝える神経の経路を、ブロックする働きをします。素早く痛みを取り除き、緊張していた筋肉がほぐされ、血の巡りも改善し症状が楽になります。
文典:井福ペインクリニック
≪トリガーポイント注射≫
トリガーポイントとは、日本語でいうと「疼痛誘発点」。つまりもっとも痛みが強い、コリの発生源です。そのポイントに、薬液を注射して、痛みが発生する悪循環を遮断し、筋肉の緊張と血液の循環を改善します。
出典:小倉台福田医院
≪ステロイド≫
肩こりの炎症を抑えて痛みをやわらげる即効性があります。しかし強い薬であるため副作用の心配があり、用法用量を厳守しなければなりません。
≪筋肉弛緩薬≫
全身麻酔のマイルド版ともいえるもので、筋肉の緊張を薬理効果により弛緩させます。
≪抗不安剤≫
心身的なストレスを取り除くものです。ただし、副作用が生じてしまうものもあります。
3-2.牽引療法
物理的に首を引っ張るなどで、頸椎等を正しい位置に戻し、そのストレッチ効果によりコリを解消します。血流が良くなり、肩こりの症状が軽くなります。
出典:やまもと内科・外科クリニック
3-3.温熱療法
患部の筋肉を温めることにより血流を増やして老廃物を流し、コリを解消します。
≪電気療法≫
筋肉が緊張している部位に電流を流すことで、血液の流れを促進し、疲労物質の排泄が改善されます。低周波治療をはじめ、さまざまな種類があります。
≪温熱療法≫
ホットパック(蓄熱材がつまったパック)や蒸しタオルで患部を温めることで、緊張した筋肉をやわらげ、血流を良くします。この他、遠赤外線を患部に照射し、体を内部から温める方法もあります。
3-4.理学療法
リハビリテーションのように、運動することで体の機能を回復させます。自力、他力や専用の器具を用いて、筋肉を動かします。肩の筋肉や関節を強化し、血液の循環不良を改善します。
4.病院に行くまでの間、市販薬で痛みを抑えましょう
我慢できないほどの痛みがあるなら「筋肉弛緩系」を使ってください。それまでの痛みでない場合は、即効性のある貼付薬や塗り薬で症状を抑えることができます。
■筋肉弛緩系
筋肉弛緩成分が配合されており、市販薬の中ではもっとも強い効果があります。すぐにでも痛みをとりたい人向け。
≪コリホグス錠/小林製薬≫
硬くなった筋肉を内側からゆるめ、肩こりを緩和します。
■貼付薬
いわゆる「湿布」に類するものです。温湿布は慢性的な痛みに、冷湿布は急性の痛みに効きます。
≪サロンパス/久光製薬≫
血行の促進や痛みを抑える成分が配合されている貼り薬。
≪バンテリンコーワパップ/興和≫
鎮痛成分が配合されており、伸び縮みしやすく粘着性にも優れています。
≪ジクロテクトPROテープ/大正製薬≫
痛みの原因物質の生成を抑えます。効果が長持ちするのもポイント。
■塗り薬
湿布がはがれやすい首筋などの有毛部位には、塗り薬が有効です。こちらも即効性に期待できます。
≪ゼノールエクサム/大鵬薬品工業≫
痛みや腫れの原因を取り除く塗り薬です。
≪ボルタレンEXローション/ノバルティスファーマ≫
痛みをやわらげる薬で、乾きやすいため、首筋など毛のある部分に使いやすいです。
≪ニューアンメルツヨコヨコ/小林製薬≫
肩こりに効果のある塗り薬で、においがほとんどのないのも嬉しいところ。
≪ズッキノン/小林製薬≫
肩の痛み、頭痛を緩和してくれます。
肩こりに効く薬は『すぐ効く薬はコレ!肩こりが一気に楽になる市販の医薬品』で、詳しく解説しています。
5.筋肉をほぐして症状を楽に! 自宅でできる肩こり解消法
≪蒸しタオル≫
濡らした後にしっかりと絞ったタオルを電子レンジで1分ほど温めると、蒸しタオルが出来上がります。これで肩や首を覆うと、筋肉を温めほぐすことができます。
また、アイマスクのように目を覆えば、眼精疲労の回復にも効果的です。
≪ストレッチ≫
肩周辺の筋肉や、肩甲骨をほぐす運動をすることで、肩こりの症状が緩和されます。腕を体の上下前後に伸ばしたり、首筋をゆっくり伸ばして回転させるストレッチが有効です。
≪入浴≫
入浴は自律神経の乱れを整えることができ、ストレス解消につながります。ぬるめのお湯にじっくりとつかると心身が休まり、心因性の肩こりから解放されます。
『家でも会社でも!いつでもできるつらい肩こりのお手軽解消法』で、肩こり解消テクニックについて詳しく解説しています。
6.まとめ
肩こりで病院に行くことを遠慮している人が多いですが、肩こりには重大な病気が隠れている可能性も否定できないことを覚えておいてください。肩こり外来や整形外科で診てもらうのが一般的ですが、酷い痛みがあったり、おかしな自覚症状がある場合は、対応している科に行きましょう。
問診には、なるべく具体的に、肩こり以外のことも説明してください。肩こりの療法にはさまざまな種類があり、その中から医師が最適な治療をしてくれます。
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