妊娠中期に肩こりに悩まされる妊婦さんは多いといわれます。お腹が大きくなって重心の位置が変化することによって首・肩・背中付近の負担が増したり、身体を動かさなくなって血行不良になるなど、妊娠中は肩こりになりやすい原因がかなりあります。
つらい肩こりの解決策として、整体院やリラクゼーションサロンなどへ足を運ぶにしても、妊娠中は移動するのさえ苦しいときがありますよね。そこで、この記事では自宅で対処できる妊婦さんの肩こり解消法をお伝えします。
ここで紹介するストレッチは産婦人科や市区町村が主催するマタニティ教室で行なわれているものですので、妊婦さんでも安心して取り組めます(ですが、体調が優れないときは、絶対にやらないこと!)。
出産後は赤ちゃん中心の生活になって、なかなか自分の時間を作れないもの。自由のきく妊娠中に、肩こりを解消しておきましょう。
1.妊婦の肩こりに効果的なマタニティヨガ、3つのポーズ
マタニティヨガとは「妊娠中を快適にすごし、スムーズなお産をする」ことを目的として体系立てられたヨガです。ヨガのポーズで妊娠期間の健康を維持しつつ、骨盤を開きやすくすることによって出産を楽にします。
産婦人科でもマタニティヨガ教室を開催していているので安心して実践できますが、始めていい時期に注意が必要です。諸説ありますが、流産のリスクが減る16週目以降の安定期に入ってから、マタニティヨガを始めましょう。
また開始時に担当医に相談するとともに、ヨガマットを用意する、無理は禁物、食事の前後は避ける、貧血気味や体調不良のときは避けるといったあたりに注意してください。
1-1.胸を開くポーズ
1.まっすぐ立って、両腕は脱力します。
2.両手を背中の後ろで組みます。
3.組んだ両手を後方に伸ばしながら、胸を大きく開きます(鎖骨が左右に伸びていくイメージ)。
1-2.花のポーズ
1.あぐら座りで両手を胸の位置で合掌し、合掌したまま両手を上に伸ばします。
2.頭上で両手をゆっくり離し、手首を曲げて、両手は拳をつくります。
3.手を拳の状態にしたまま、両手を腰の後ろにゆっくり移動させます。胸を開くのがポイントです。
4.両手が背中側の床に着いたら、顔を斜め上に向けて、胸を開きます。
1-3.イーグルのポーズ
1.背筋を伸ばしてあぐらで座り、両腕を胸の前でクロスさせます。
2.肘を曲げ、顔の位置で両手の平を合わせます。
3.天井に向かって両腕を上に伸ばします。
2.妊婦体操(安産体操)で首・肩周辺をケア
妊娠するとお腹が圧迫されてうっ血の症状が見られたり、腹筋が使いにくくなるため腰痛などに悩まされることが少なくありません。それらの症状を緩和し、さらにお産を楽にすることを目的としたのが妊婦体操です。
ここでは、その中にある肩こり対策の体操を紹介します。市区町村が妊婦健診の一環で実施しているマタニティ教室で教えているものなので、安心して行なえます。
マタニティヨガ同様、こちらの体操も行なうのは安定期に入ってから。ちょっとでも不調を感じたら中断しましょう。
2-1.首曲げ、首回し
- 頭をまっすぐに立ててから、あごを引きます。
- 頭頂部で大きな円を描くように頭を回します。前方で大きな円を描きましょう。
2-2.肩回し
- 両手の指先を肩につけて、肘を後ろから前に回します。数回ゆっくり行なったら、肘を前から後ろに回します。
2-3.首の筋肉運動
指を組んで後頭部にあてて、頭と手で数秒押し合います。続いて、手のひらをおでこにあてて、おでこと手で押し合います。
2-4.妊婦体操で全身をリラックスしよう
妊婦体操には、首や肩周りだけでなく他の部分を対象にした体操もあります。肩こりの原因の1つに血行不良があります。最初は足の運動など軽めの体操からスタートし、徐々に増やして身体全体の血行を促進させましょう。全ての妊婦体操の内容は下記リンクをご参照ください。
3.マタニティヨガ、妊婦体操をやる際の注意点
上記で紹介したマタニティヨガと妊婦体操は、いずれも妊婦健診の一環で実施しているマタニティ教室で教えているものなので、妊婦さんが行なっても問題ない運動です。しかし、妊娠中にいつでも行なっていい訳ではなく、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
妊娠初期はつわりが始まるなど、体調が変わりやすくなっています。流産の危険性もあるため、マタニティヨガや妊婦体操を行なうのは安定期を過ぎてからにしましょう。
安定期に入ってからも注意が必要で、お腹が張る時や痛みがある時は絶対に行なわないでください。また運動中にお腹が張ってきたり、疲れてきたら、すぐに中断しましょう。
<運動する際の注意点>
・運動を始める前に産婦人科医に相談する。
・妊娠初期は控える。
・安定期(16週以降)になってから開始する。
・楽な服装で行なう。
・空腹時、食後、入浴後は控える。
・絶対に無理をしない。長時間行なわない。
・医師から安静の指示が出ている時は絶対に行なわない。
・体調の優れない時は控える。
・お腹が張った時、痛みを感じた時は控える。
4.妊婦が肩こり解消に使える内服薬、湿布、磁気ネックレス
4-1.内服薬は産婦人科医が処方されたものを
基本的に市販されている内服薬は、妊娠中に飲まなくてもいいものだと考えましょう。例えば肩こりに効果のある「ドキシン錠」という内服薬があります。主成分の「メトカルバモール」が筋肉の異常緊張を和らげて、こりと痛みを取り除いてくれるのですが、このメトカルバモールは、妊娠中の投与に関する安全性が確立されていません。
もし、どうしても内服薬が必要なのであれば、一度かかりつけの産婦人科医に尋ねてみましょう。
4-2.湿布・塗り薬は「使用上の注意」を確認して選ぶ
基本的に妊婦さんは湿布や肩こり用の塗り薬を使っても大丈夫です。ただし、製品の「使用上の注意」に妊婦、妊娠についての記載がないものだけを使用しましょう。
というのも湿布薬や塗り薬の成分にはインドメタシンやボルタレンなど、血管を収縮させる作用の強い成分があり、それらが配合された湿布を過度に使いすぎると、赤ちゃんに流れる血液量を減らしてしまう危険があるためです。最近では2014年4月に湿布(外皮用剤)の「使用上の注意」の改訂が発表されました。
湿布や塗り薬に関して悩む行為そのものがストレスになり、母体に影響しては元も子もありません。湿布は「使用上の注意」を確認して、妊婦に関して何も書いてない製品を選ぶ…、そうシンプルに考えておきましょう。以下、妊婦さんが使っても大丈夫な製品の一部を紹介しておきます。
<サロンパスA/久光製薬>
<パテックスうすぴたシップ/第一三共ヘルスケア>
<アンメルツヨコヨコ/小林製薬>
文典:医薬品・医療機器等安全性情報 厚生労働省/2014年4月30日
4-3.評価の高い磁気ネックレスで肩こり解消
妊婦さんでも使用できる肩こり解消グッズとして、ここではamazonのヘルス&ビューティーカテゴリでもっともユーザーの支持が高い磁気ネックレス「ピップマグネループEX」を紹介します。磁気ネックレスの魅力は首に下げているだけで効果を得られること。身体を動かすのもつらい妊婦さんにはおすすめです。
<ピップマグネループ/ピップ>
この製品は「妊娠初期の不安定期(妊娠15週まで)の方、出産直後(産後6週まで)の方は、ご使用前にかかりつけの医師にご相談ください」とありますが、これは「安定期から出産前までは問題ない」ということです(メーカーに確認済み)。使うのが不安な方は一度かかりつけの産婦人科医に相談してみるとよいでしょう。『しつこい肩こりに!肩こりネックレスの商品比較と賢い選び方』も参考にしてみてください。
5.生活態度を見直して肩こりを解消する
肩こりの原因となり、それを悪化させる日々の生活を見直すことによって、少しでも肩こりを解消させることはできます。
5-1.血行を促進させる
血の巡りが良くないと肩こりは悪化してしまいます。寒い部屋にいたり、冷たい床を素足で歩くのはやめましょう。全身の血行を良くするために、40度のお湯に10分間ほど入浴すれば、肩こりが和らいでいることを実感できるでしょう。また首や肩の周辺にシャワーを当てるのも効果的です。
5-2.眼精疲労を軽減させる
眼精疲労が原因で肩こりになるケースもあります。スマホやテレビ、パソコンの利用を控えたり、蒸しタオル(タオルを水で濡らして、電子レンジで1分温めたもの)や市販のアイマスクを活用して、目の疲れを取りましょう。
出典:amazon
5-3.ストレスを解消させる
精神的、身体的なストレスを感じると身体は興奮状態になり、その結果筋肉が硬くなって肩こりになります。身体の変調や出産の準備など、妊娠中は悩みが尽きないもの。自分なりのストレス解消法を見つけて、早めにストレスを解消しましょう。不安に思っていることは一人で抱え込まないように!
旦那さんや友人、かかりつけの産婦人科医に話を聞いてもらうだけでも、ストレス解消になりますよ。
6.肩こりで悩む妊婦さんが多い理由
肩こりが起こる原因は、
- 肩や首周辺の筋肉疲労
- 眼精疲労
- ストレス
の3つといわれています(詳しくは『気になる肩こりの三大原因!その解消法もあわせてチェック』をご覧ください)。
さらに妊婦さんが肩こりになりやすいのは、これら3つの原因以外にも理由があるからです。
6-1.運動不足
つわりがひどかったり、産婦人科医の指示で安静している期間が長くなったりと、妊娠中は運動不足になりがちです。血の巡りが悪くなると肩こりになりやすいので、無理のない範囲でマタニティヨガやストレッチなどを行ないましょう。
6-2.身体の変化
妊娠中期に入ってくるとお腹や胸が大きくなって身体の重心が変化してきます。背中や首、肩周辺の負担が大きくなり、肩こりになりやすくなります。
6-3.ホルモンバランスの変化
特に妊娠初期の人に多く見られますが、妊娠するとホルモンのバランスが乱れやすくなり、身体が熱くなったり、頭がぼんやりします。それらの症状を解消しようと身体を冷やしすぎるあまり、血の巡りが悪くなって肩こりになるケースがあります。
7.まとめ
妊娠中は身体への負担が大きい上に、精神的なストレスもかなりのものですから、肩こりになってしまうのは仕方がありません。この記事で取り上げたストレッチを試したり、妊娠中でも使える湿布や磁気ネックレスを利用して、肩こりを解消しておきましょう。ストレッチする際はくれぐれも無理のない範囲で行ない、違和感があった場合はかかりつけの医師に相談しましょう。