足がつる癖があり、その原因をつきとめて改善したいとお考えではないですか? 運動した時や日々の仕事で疲れをたまっている時、そして就寝中などに、足がつってしまう人は多くいますが、その理由は何なのでしょうか。まずは足がつる場所を整理してから、その原因を見ていきます。
また、もしかして大きな病気の初期症状として、足がつるようになっている可能性も考えられます。ここでは病気と症状、診察すべき科をまとめますので参考にしてください。そして、足がつってしまったときの処置の方法や、それを予防する方法も解説します。
1.ひと口に足といっても、つる場所はさまざま
足がつるというと、ふくらはぎをつる「こむら返り」が代表的です。その他に、足の指や、足の裏や甲がつり、足の指がおかしな形になって固まってしまう症状を経験したことがある人も多いのではないでしょうか。このようにさまざまな症状があるわけですが、いずれも筋肉が過度の緊張状態により異常縮小した状態で、専門的には「有痛性筋痙攣」といいます。
1-1.ふくらはぎがつる
いわゆる「こむら返り」で、こむら(腓)とはふくらはぎのこと。ふくらはぎ=腓腹筋が痙攣してしまう症状です。
文典:肉体改造研究所
1-2.足の裏(表)がつる
土踏まずのあたり(足底)がつる症状です。あるいは足の甲側(足背)がつることもあります。足底の固有筋(短母指屈筋、短指屈筋など)、足背の固有筋(短母指伸筋、短指伸筋など)が痙攣してしまう症状です。
左画像が足底面、右画像が足背面の筋肉です(ともに右足の図)。
1-3.足の指がつる
足の指がつる症状も、足底側と足背側で起こります。足底の固有筋(長指・長母指屈筋群)、足背の固有筋(長指・長母指伸筋群)が痙攣してしまいます。
左画像が足底面、右画像が足背面の筋肉です(ともに右足)。
文典:田中接骨院
2.足がつる原因
足がつるメカニズムとしては、主に筋肉が疲労することと、水分・栄養が不足することが二大要因となります。その他、就寝中や身体のコンディションにより、つりやすくなることもあります。
2-1.筋肉疲労
運動時に、筋力以上の負荷がかかった場合、筋肉に老廃物(緊張成分)がたまっていきます。この老廃物が筋肉全体に滞留してしまうと、筋肉が硬くなります。特に腓腹筋は体積が大きいため、老廃物がたまりやすい特徴があります。そのため、他の筋肉に比べて圧倒的に痙攣が起こりやすいのです。激しい運動だけではなく、日常生活における瞬発的な動きや、立ち仕事などでも起こり得ます。
2-2.水分不足、栄養不足
水分が不足していると血行不良となり、筋肉に栄養が行き渡らなくなります。またミネラル(カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなど)は筋肉の働きを調整する役目がありますが、そのバランスが崩れてしまうと筋肉を調整する働きが乱れてしまいます。
スポーツで足がつりやすくなるのは、汗をたくさんかき、水分やミネラルを失ってしまうからなのです。
2-3.その他
<就寝中>
就寝中は筋肉が動かないため、老廃物を排出する働きが停滞します。そのため老廃物が筋肉内に滞留してしまい、痙攣しやすい状態になります。そして寝返りや、背伸びによって一時的に筋肉に負荷がかかると、つってしまいます。
<エアコン等による冷え>
寝ている間にエアコンや扇風機をかけていると足が冷えて血行不良となり、足がつりやすい状態となってしまいます。エアコンや扇風機がついていなくても、冷え性の女性に起こりやすい傾向があります。
<妊娠中>
妊娠してお腹が大きくなると、足がつりやすくなります。それは骨盤が緩んで足の筋肉が引き伸ばされ、下半身に負荷がかかるからです。また、栄養素を赤ちゃんに与えて、妊婦自身の栄養が不足することも影響すると考えられています。
<.薬の副作用>
血圧を下げる降圧剤や、ホルモン剤が原因となり得ます。これは、血流が不足して足に酸素や栄養が届きづらくなるためです。
3.他の病気が潜んでいる可能性も!
大きな病気が隠れていると、その初期症状として足がつるということもあります。下記のような病気が潜んでいる可能性があります。十分な休養や栄養をとっているのに足がつりやすかったり、あるいは足がつる以外にも身体に不調があったりするようならば、病院で診てもらうべきだといえます。
<脳梗塞、脳卒中、心筋梗塞、静脈瘤、閉塞性動脈硬化症>
心臓や血管など、いわゆる循環器の働きが悪くなる病気により、足がつる症状が引き起こされる可能性があります。
[病院に行くべき症状]片方の手足のまひ、言葉のもつれ、歩行障害
[診察してもらう科]内科、神経内科、循環器科、脳神経外科、血管外科
<糖尿病>
糖尿病の合併症として、神経障害があります。神経の働きが乱れることによって筋肉が異常縮小し、足がつる症状が引き起こされてしまいます。また血糖値が高い状態が続き、ミネラルのバランスが崩れることも要因となります。
[病院に行くべき症状]喉の渇き、手足のしびれ
[診察してもらう科]内科、内分泌代謝科
<肝臓疾患、腎臓疾患>
肝臓や腎臓など、体内の毒素や老廃物の排出や調整の働きが悪くなる病気です。これにより足がつりやすい状態になってしまいます。
[病院に行くべき症状]むくみ、尿量の変化、だるさを感じる、不眠
[診察してもらう科]内科、消化器内科
<椎間板ヘルニア、変形性腰椎症、脊柱管狭窄症>
椎間板や腰椎、脊柱管といった背中や腰回りの神経に異常が起こる病気により、足がつりやすくなることもあります。
[病院に行くべき症状]立っているのが辛い、足のしびれ、筋力の低下
[診察してもらう科]整形外科
4.足がつってしまったら!緊急の対策法
足がつるとは、ようするに筋肉が縮んだまま固まり、伸びづらくなっている状態です。それなのでつっている(縮んでいる)筋肉をゆっくりと伸ばして、筋肉を軟らかくすることで、症状を緩和することができます。ポイントは、ゆっくりと伸ばすことです。急に力を入れると、筋肉を傷める原因となってしまいます。
4-1.まずは伸ばすことが重要!
<ふくらはぎがつった場合>
ポイントとしては、足首の関節とひざの関節を意識して伸ばすことで、腓腹筋やアキレス腱など全体的な筋肉が効果的に伸ばせます。これを1分ほど続けると、痛みが取れるでしょう。
足首とひざ、どちらか一方の関節を伸ばすだけでは、筋肉が十分に伸びません。一人で行う時も、他人に伸ばしてもらう時も、両方を伸ばすというポイントをおさえると良いでしょう。
文典:家庭の医学
<足の裏(表)がつった場合>
つってしまった側の筋肉をゆっくりと伸ばします。足裏なら指を身体側に引き、足背なら指を身体から遠ざけるようにします。
左画像は足裏がつった時、右画像は足背がつった時に伸ばす方向です。
<足の指がつった場合>
足裏(表)がつったときの処置と同様に、筋肉をつってしまった反対側へゆっくり伸ばします。
左画像は指の裏がつったとき、右画像は指の背がつった時に伸ばす方向です。
文典:田中接骨院
4-2.痛みが緩和したら血行促進に切り替え
筋肉をゆっくりと伸ばすことで、けいれんによる痛みがやわらいだら、その次は血行を促進するようマッサージやストレッチに切り替えます。血行を良くすることで、酸素や栄養がきちんと運ばれる状態に戻すのです。また水分やミネラルを補給することで、回復を助けることができます。
5.足がつるのを予防する方法
足がつるのを予防するためには、筋肉を軟らかく保ち、水分や栄養を十分に取っておくことが対策となります。スポーツをするときだけでなく、日常生活でもこれらに気を配ると良いでしょう。
5-1.運動をする前の予防
運動前にはふくらはぎを中心に、足裏や指の筋肉も柔軟にする体操を行うのがベストです。筋肉が軟らかければつりづらくなります。また、運動中に水分と共にミネラルも補給すると良いでしょう。
5-2.睡眠前の予防
運動前ほど本格的な程度ではなく簡易的でも良いので、ふくらはぎや足裏、足の指をストレッチしたりマッサージしたりすると血行が促進でき、就寝中のつりを予防できます。また足先を冷やすエアコンや扇風機をかけたままで寝るのは避けるべきです。
5-3.日常生活での水分と栄養の補給
1日に1リットル以上の水を摂取するのが良く、ミネラルウォーターが最適だと言われています。また栄養素としては、カルシウム(乳製品や小魚類が多く含む)、マグネシウム(大豆食品が多く含む)、カリウム(野菜、イモ類が多く含む)、ナトリウム(しょっぱい食品や調味料が多く含む)を摂ると良いでしょう。
5-4.漢方薬
漢方薬では芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)が、予防に効果的だと言われています。予防だけでなく、足がつったときの症状緩和にも効果があります
6.まとめ
足がつるのは、筋肉が硬くなっていて、水分や栄養が不足しているときです。逆に言えば、筋肉が軟らかく、水分や栄養が十分であれば、つりにくくなります。
よく足がつる癖がある人は、普段から足をストレッチしたり、水分や栄養を摂ったりすることを意識することで、対策すると良いでしょう。
こわいのは、大きな病気が隠れているケースです。もし別の体調不良もあるようならば、病院で診てもらうべきだといえます。