1、太ももの違和感、もしかしたらそれは坐骨神経痛が原因かも?
座る、立つ、歩くという人間の基本的な動作。このいずれにも深く関わっている部分が太ももです。ここに不調があると、日常生活にダイレクトに支障をきたしてしまいます。歩行そのものが億劫になってしまいますし、高齢の方だと太ももの不調が原因でそのまま無気力生活に陥ってしまう、なんてことも十分考えられますから注意が必要です。
そんな人間生活において大きな役割を担っている太ももですが、皆さんは太ももの不調と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。もしかすると、大たい骨の骨折を思い浮かべる方は多いかもしれません。確かに、バランス能力と筋力の低下した高齢者が大たい骨を骨折してしまい車椅子の乗らなければならなくなった、という事例はテレビでも盛んに報道されていますし、インパクトの強い事例なので身の回りにいらっしゃる場合は強く印象に残るでしょう。しかし、言い方は極端ですがこういった怪我は原因がわかりやすく治療方法も確立されているため、きちんと養生をすれば元通りとまではいかないまでもある程度完治することがほとんどです。本当に厄介なのは、骨折や打撲のような直接的な原因を持たない太ももの不調。具体的にはつっぱり感や疼痛、しびれ、ぴりぴりと電気が走ったような痛みなどが挙げられます。痛い箇所も太ももの裏や外側、内側などさまざまで、両足の太ももが痛むという人もいれば左足だけ、右足だけ痛むという人も。こういった不調は症状が安定していない場合も多いため医療機関への受診に踏み切ることもできずになんとなく日々をやり過ごしている方も多いと思われます。そんな太ももの違和感の正体は、もしかしたら坐骨神経痛かもしれません。
坐骨神経痛とは腰から足先まで伸びている人体の中で一番長い神経である坐骨神経が、何らかの原因によって圧迫されていることから発生する痛みです。よく坐骨神経痛を疾患名と勘違いしている人がいますがこれは間違い。坐骨神経の異常によって起こる痛みをさすわけですから、坐骨神経痛というのはあくまでも痛みをさす症状の総称になります。原因はさまざまあり腰部脊柱管狭窄症や腰部椎間板ヘルニアが代表例ですが、アルコール依存症や生活習慣によることもあります。
今回の記事ではそんな坐骨神経痛の中でも太ももにあらわれるものを詳しく見ていきたいと思います。
2、太ももの痛みや違和感の原因、症状の現れ方をチェック
太ももの外側や内側、前部など人によって症状の現れる場所はさまざまです。それと同じように、太ももの不調が起こる原因も千差万別で、なかなか一口にはいえないのが現状と言えます。
ただある程度は自分でもその原因を調べることができます。太ももの違和感には、大別して関節が原因のものと神経が原因のものがあります。太ももの筋肉に突っ張るような感覚や電気が走るようなぴりぴりした感覚がある、という場合にはまずは関節の稼動域を確認してみてください。無理のない範囲でしゃがみこみやストレッチなどを行い、痛みを感じたり以前と比べて明らかに稼動域が狭くなっているような場合には関節の疾患の疑いがあります。関節の稼動には特に問題が見られなかった場合は、神経が原因になっている可能性が高いです。
先ほど坐骨神経痛の原因として腰部脊柱狭窄症や腰部椎間板ヘルニアを挙げましたが、これを読んだ方の中には「なんで太ももの話なのに腰が原因になるんだろう」と疑問に思った方もいるかもしれません。簡単に説明すると、頭から伸びた神経は背骨を通って腰にいき、そこから下半身に分岐していきます。ここでその分岐点で何らかの原因により干渉を受けてしまうと、その神経が担当する範囲全体に違和感などの症状が出てしまうというわけです。なので腰痛が伴う場合もあれば、太ももの違和感が強い場合もあるので一概に「この症状が出ているからこの病気である」と言えないのが厄介なところと言えます。また、神経が原因の場合はいくら太ももをマッサージしても根本的な解決につながることはほとんどなく、その干渉の原因を取り除くことが重要になってきます。
3、太ももの痛みの原因&対処法は
さて先ほどの判別方法で、この痛みが関節に起因するものなのか神経に起因するものなのかがわかったと思います。中には神経の問題と聞くと「どうせ意味がないから」と病院に行きたがらない方がいますがこれはダメです。これからの治療プランを立てていく上で専門家の知見というのは不可欠ですし、お医者さんだからこそできることも当然あります。
坐骨神経痛の初期治療は投薬とストレッチやマッサージなどのリハビリの両輪で行っていくことになります。これで解消されなければブロック注射や最後の手段として手術があります。あるいは東洋医学に頼るのも手です。整骨院や鍼灸院では体のゆがみを治すことで坐骨神経へのストレスを減らし、痛みを取り除いていくという方法が主にとられます。しかしこの施術は脊柱管狭窄症やヘルニアの状況によってはあまり効果がなく、腕の悪い先生に当たってしまうと逆に悪化させる恐れもあります。信頼できる先生がいない場合は、まずレントゲンやMRIなどで現状を確認することからはじめましょう。
神経の圧迫を和らげるために日常からできることもあります。姿勢を良くしたり体感トレーニングをしたりすることで体のバランスを正しい位置に持っていけるので、これらを続けるだけで痛みが引くこともあります。覚えておいて欲しいのは、太ももの痛みだからといって必ずしも患部周辺に原因があるわけではないということ。それからもしそういった不調が続くようであればためらわずに専門家に指示を仰ぐこと。歩くこと立つことさえもできないほど症状が進んでからでは遅いですから。