ヘルニアってよく聞くけどどんな状態なの?
首の痛みが取れない、首を自由に動かすことができない、体のいろいろなところに痺れが出てきた……。こんな不調が長引いて心配になり病院でレントゲンを撮ってみると「ヘルニアですね」の一言。ヘルニアに苦しめられている人は案外少なくなく、もしかしたら経験談の一つや二つは聞いたことがあるかもしれませんね。しかし実際に自分がなってみると、意外と分からないことだらけではありませんか?
首のヘルニアは正式には「頚椎椎間板ヘルニア」と呼ばれ、簡単に言えば首にある椎間板がつぶれてはみ出してしまっている状態です。首から背中にかけてはご存知のとおり、背骨が通っています。そしてこの背骨は、大きく言うと椎体と椎間板の連続によって成り立っています。体を支える硬い部分である椎体と、椎体と椎体の間でクッションのような役割を果たす椎間板が交互になっているのです。人間は普通に立っているだけでも重力によって縦方向の力を受け続けています。歩いたり走ったりなどして大きい衝撃がかかると、骨の硬い部分だけではその衝撃を受け止め切れません。そこで間に柔らかい椎間板を挟むことでその衝撃を緩和しているのです。頚椎椎間板ヘルニアという病気は、もろもろの理由から変形してもとある場所から飛び出してしまっている状態のことを言います。この飛び出した部分が神経を圧迫して痛みや痺れなどの症状を呼び起こしているのです。
ところで首は、人間の体においてとても大切な二つの役割を担っています。まず一つ目は、人間の部位の中でも屈指の重さを誇る頭部を支えるということ。そのため、首には多くの負担が集中しています。二つ目は、アンバランスな体のバランスをとるということ。実は、人間の体は重い部位が最上部にあるという非常に不安定な構造をしています。細い首がその役目を担っていることには若干の不安を覚えるかもしれませんが、人体はそのような作りになっているのです。
頚椎椎間板ヘルニアを治療するためには、その負担をなるべく少なくしていかなければなりません。しかし先ほども申し上げたように、首は普通に生活しているだけで常に負荷がかかる状況にあります。その状況下で、比較的首をストレスフリーにすることができる時。それは縦方向にかかる力が弱まっている時、睡眠時をおいて他にありません。睡眠中、首や頭の付近には常に何かがありますよね。そう、枕です。自分にぴったりの枕を選ぶことができれば首の負担を減らすことができますが、逆にまったく合わない枕を選んでしまったら負担軽減どころか、余計な負担を首にかけることになってしまいます。だから頚椎椎間板ヘルニアを患っている方には自分にあった枕選びというものが特に重要になってくるのです。
あなたの「楽」が、枕の「正解」
ではどのような枕が頚椎椎間板ヘルニアには有効なのでしょうか。これは残念ながら一概には言えません。「ヘルニア治療にはこれ!」といえるような枕は存在しない、というのがその疑問に対する答えとなります。
そもそも頚椎に限らず椎間板ヘルニアというのは個人差がとても大きいものです。どこの椎間板が変形しているのか、あるいはどのあたりの神経をどのように圧迫しているのか、というのは千差万別ですから。
ただし、症状別にパターン化しておおよその「あなたに合う枕」を紹介することはできます。
たとえば上を向くと痛みが出る場合。このときには、高さの在る枕を選ぶといいでしょう。上を向くと痛いということは首の後ろを縮めると痛みが出るということです。高い枕を使用することで首の後ろを伸ばすようにしてあげれば、ある程度痛みが和らぎ、首への負担も減らすことができます。もちろん逆もまた然り。下を向くと痛みが出る場合には、低い枕を使ってみましょう。
次は首を傾けたときに痛みが出る場合です。こちらも考え方は同じで、痛みの出る方と逆の動きをしてあげれば痛みは出にくくなります。例えば右に傾けたときに痛みが出るのなら、高い枕を用いて右側を向いて寝るか、あるいは通常の頭の位置より低くなるような低い枕を使って左を向いて寝るのがいいでしょう。
こうした枕の調整は、枕を新調せずとも行うことができます。もし今お使いの枕が少し低いな、と感じるのなら枕にタオルを重ねて高くすることが可能です。また今の枕が高すぎる、というのなら枕を使わないというのも手です。タオルケットをお好みの高さまで重ねることで、自分のコンディションに合った枕を作ることができます。タオルケットだと寝返りの度に形が崩れていって使いにくい場合は、市販されている薄めのクッションを複数枚用意しておくといいでしょう。これなら形も崩れにくいので余計なストレスも感じません。
ただ、繰り返しとなりますがヘルニアは個人差がとても大きいもので、また同じ人であっても日や状態によって症状が大きく変わります。なので、この枕を使えば絶対に大丈夫!ということは言えません。上記のようなパターンで枕を試してみても、合う人にはぴったり合いますし、合わない人には合わないというのが本当のところです。
しかし、どんな頚椎椎間板ヘルニアといえども体の治癒力を増強させれば回復につながることは間違いありません。そこで脳が睡眠時に送る自然治癒の信号に着目した「けんこう枕」などは一定の効果が見込めます。これは頭部から首下に掛けての広い範囲をカバーする枕で、胸から上の体重を後頭部と肩で支えることで頚椎を体重からフリーにすることを実現、負担軽減に加え神経の通りも良くなるためスムーズな自然治癒の信号の伝達を可能にした枕です。
寝方にも気を付けて
また枕だけでなく寝方でも痛みを軽減、あるいは頚椎椎間板ヘルニアを治す方向に持っていくことができます。例えば首の下から肩甲骨くらいまでの範囲にタオルを入れて高さを出すと、枕とのギャップが少なくなるので症状が安定することがあります。また、椎間板ヘルニアというのは軽微な重さにも敏感に反応するものです。横向きが自分にぴったり合っていると思って横向きで寝ていたけど、ちょっと動いただけで痛みが出る、そのような方は腕の重さが痛みの原因になっているかもしれません。その場合には、横を向いたときの胸のあたりにある程度高さのあるクッションをおき、クッションの上に上側にある腕を乗せて安定させてあげると痛みが出なくなることがあります。
ヘルニアという病気はとにかく個人差が大きいものなので、自分にぴったり合う寝方をいろいろ試行錯誤しながら見つけるようにしましょう。